社会医療法人河北医療財団 河北総合病院

PSM活動にSafe Masterインシデント管理システムを取り入れ、質の高い医療安全活動を実現する河北総合病院

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[左より]
社会医療法人河北医療財団 財団本部PSM委員会事務局 瀧井勇次郎氏
河北総合病院医療安全管理室室長・内科 藤井達也氏
河北サテライトクリニック院長 兼 診療の質向上部部長 尾形逸郎氏
河北総合病院医療安全管理室 医療安全管理者 佐久間喜深氏
河北総合病院医療安全管理室 感染管理認定看護師 浅野美奈子氏

河北総合病院はいち早く患者安全を第一に考えた独自のPSM(Patient Safety Management)活動に取り組み、地域の中核病院として質の高い医療安全活動を実現されています。
2010年にSafe Masterインシデント管理システムをご導入いただき、河北総合病院、健診センター(河北健診クリニック)、河北リハビリテーション病院、介護老人保健施設シーダ・ウォークの4施設で医療安全推進のためにご活用いただいております。
PSM委員会事務局と医療安全管理室の皆さんに、PSM活動の具体的な取り組みの内容とSafe Masterの実際の活用法についてお話を伺いました。

PSM委員会では具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。

尾形氏 当院では、患者さんのID確認を徹底しようということで、まずPatient Identification Confirmation(PIC)活動がスタートしました。

医療を提供する相手が患者さんご本人であることを確認し、自分の行為を確認することを基本にしています。
これをすべての職員が自覚してできるように、職員全員がPIC活動のワッペンを胸につけています。

各事業所、各部署が一丸となってPIC活動を推進し、その一環として業務のマニュアル化などの「見える化」も進めてきました。
また、患者さんもチーム医療の一員であるという考え方から、患者さんにもID確認の重要性を自覚していただくようにしています。

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河北サテライトクリニック
院長 兼 診療の質向上部部長 
尾形逸郎氏

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職員全員がこのPIC活動の
ワッペンを付けている

医療安全に関しては、最初はリスクマネジメントの考え方からmedical risk management(MRM)として活動をスタートしたのですが、2000年からはリスク回避というよりも患者さんの安全を第一に考えることを念頭に、Patient Safety Management(PSM)委員会を病院内に設けて活動を転換しました。

具体的にはヒヤリハット報告を収集し、PSM委員会で検討し、大きな事故につながらないようにするためのさまざまな活動を行っています。

PSM委員会と医療安全管理室はどのように連携しているのでしょうか。
尾形氏 PSM委員会は医療安全に関するさまざまなことを議論あるいは承認するような場となっており、医療安全管理室はそのための資料を作成したり、ヒヤリハット報告を集計したりする事務局的な役割となっています。
感染管理については、もともとは医療安全とは別部門だったのですが、2013年1月からは統合して医療安全管理室で一元管理するようになりました。
PSM委員会は現在、財団の各部署の代表47名で構成され、月1回委員会を開催しています。PSM委員会の活動の基本はPIC活動、つまりID確認になります。
ID確認の徹底をはかるため、各外来の入り口にID提示を求める掲示をしており、入院患者さんに関しては、了解を得たうえで顔写真の入ったIDリストバンドをつくっています。
ID確認に関連すること、あるいはその他の問題が発生した際はPICレポートとして現場の全職員に報告してもらっています。当院ではこれがいわゆるインシデント報告で、セーフマスター社のSafe Masterインシデント報告システムに登録しています。
藤井氏 医療安全管理室は室長の私を含め5名が常駐しています。医療安全管理室では、PSM委員会で決定したPSM方針に基づいて当院の医療安全管理の実務を担っています。
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河北総合病院
医療安全管理室室長・内科 
藤井達也氏

具体的には、PICレポートやセーフマスターのインシデント報告システムに登録されるレポートを確認・対応・集計・管理したり、ジェネラルセーフティマネジャーの指示のもと委員会の資料や議事録を作成したりするほか、医療事故に関する診療録や看護記録が正確かつ十分に記載されているかを確認したり、必要に応じてその指導を行っています。

事故発生時の患者さんやご家族への対応状況についても確認・指導を行います。事故等の原因究明が適切に実施されているかを確認、指導することも重要で、改善計画書の作成やマニュアルの改訂など、医療安全対策に関する全般の推進を担っています。

医療安全に関連した指標はどのようなものを使用されているのでしょうか。
尾形氏 当院では、一般的な指標としては平均在院日数、死亡率など、感染管理に関しては手指衛生実施率、MRSAの発生率、CDトキシンの出現率などを見ています。
医療安全に関しては転倒・転落発生率を出しています。いくつかの指標はホームページ等で公開していますが、基本的には自分たちの医療の質向上のために使用するものだと考えています。
当院はもともと確立された医療を確実に行うことが基本方針ですので、ベンチマークと比較してもほとんど外れ値にはなりません。
スタッフが医療をきちんと行っていれば、ベンチマークの水準内には必ず入りますので、指標については主に自分たちが実施した病院内の改革を評価するために使用しています。
確かにベンチマークを用いて他病院と比較することも有用ですが、当院は患者さん一人一人がきちんとした医療を受けているかを確認することが何よりも大事だと考えていますので、最近ではカルテ監査を行うためのシステムづくりを手がけ始めています。
瀧井氏 医療安全の教育という面では、PIC院内研究会を開催しています。2001年7月から、1月、7月の年2回、インシデント事例が発生したときに、どのようにその部署が原因究明し、対策を講じて改善に至ったかを発表してもらい、病院内の注意喚起と意識向上につなげています。
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社会医療法人河北医療財団
財団本部PSM委員会事務局 
瀧井勇次郎氏

藤井氏 医療安全および感染管理については、最近は改善のために方針を立て、指標をもとに評価をし、実際に改善が見られたとしても、そこで終われないというトレンドがあります。
実行するのは難しい面もありますが、常に監視をし、タイミングよく介入し、さらにそれを継続していくことが重要だと考えています。

2010年12月から当社のセーフマスターをご利用いただいておりますが、導入して良くなった点、院内の評価などはいかがでしょうか。
瀧井氏 システムの導入前までは紙のレポートが届くのに少なくとも1週間から10日ほどかかっていました。本人が書いて、書いた内容を所属長が確認・チェックした後で段階的に上がってきますので、発生日と報告日が乖離しているということもありました。
現在はセーフマスターに入力している報告が一時保存の状態でも事務局で見ることができますので、入力途中になっている場合はこちらから「どうなっていますか?」という問い合わせもでき、報告に関してのスピードは格段に速くなりました。
尾形氏 インシデント報告には個人情報も含まれますので、紙にしてしまうといろいろな意味で処理が大変です。また、以前は報告書を20~30部コピーして各部署に配っていたのですが、システム化したおかげで資源のムダも少なくなりました。
瀧井氏 導入前は、報告書の内容を専従の職員がExcelシートに打ち直していました。しかし現在では、システム上で統計まで完結することができますのでとても助かっています。
セーフマスターを使用可能な端末は施設内にどのくらいあるのでしょうか。

瀧井氏 電子カルテのシステムと連携した端末で約450台、職員が利用できるイントラネット端末が約350台で、合計約800台の端末からアクセスすることが可能です。

インシデント報告数はどのぐらいになるのでしょうか。
瀧井氏 セーフマスターを導入した2010年は3,578件、2011年は3,056件、2012年は3,098件ありました。
尾形氏 組織の中で起こりうることは大体決まっていて、大きなアクシデントが起こらないようにすることが大事だと思います。報告数はあまり重要ではないかもしれません。
ただ最初のうちは「報告していいのかな」、「報告したくないな」という反応もあったと思いますが、基本的には報告することに対して罰則があるわけではありませんので、何かあったときに報告するという習慣ができていることが大事だと思います。
一方で、業務の合間に詳しく報告することが負担になることもありますので、インシデントの種類や状況によっては簡単な報告でもかまわないというような運用も検討しています。
医療安全管理室やPSM委員会で問題があると判断すれば詳しく報告してもらうことになると思いますが、そのような運用にすることで現場の職員の負担軽減につなげたいと考えています。
報告される職種としては看護師が多いと思いますが、医師からの報告状況はいかがでしょうか。

尾形氏 看護師と比べると医師からの報告は少ないですが、医師に対してもなるべく報告してもらうように指導しています。
ただ、明らかにおかしいことについては挙げてもらわないといけないですが、最良と思われる医療行為を行っても起こり得ることが少なからずありますので、どの程度から報告すべきという線を引くのは難しいと思います。それでも以前と比べると医師からの報告は増えてきています。

セーフマスターの操作方法について、現場から問い合わせはありますでしょうか。

瀧井氏 よく聞こえてくるのは、最初の画面でインシデントをどのカテゴリに分類するかがわからないという問い合わせです。現状では問い合わせがあった時点で医療安全管理室がすぐに対応するようにしています。
また、当事者なのか発見者なのかという区別については、人それぞれの解釈の問題かもしれませんが、報告者によってばらつきがあるように思います。

報告された内容についてもう少し詳しく書いてほしいと依頼するケースは多くあるのでしょうか。
佐久間氏 報告書の内容は私がチェックして、必要な場合には当事者に戻すようにしています。
そこで何回かやり取りをして、それから所属長に直接「こういう指導をしたので見てほしい」という形で連絡しています。
特に新人の職員が当事者の場合などは「こういう指導をしてほしい」という連絡を入れることがあります。
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河北総合病院医療安全管理室
医療安全管理者 
佐久間喜深氏

インシデント報告のなかの警鐘事象については院内で公開されるのでしょうか。
佐久間氏 レポート自体の公開はしていませんが、こういう事例があったので気をつけましょうという事例は医療安全管理室からPSM委員会に報告し、採用されれば年2回発行しているPICニュースの中で取り上げ、院内に貼り出しています。
瀧井氏 PICニュースの中で紹介する事例の他にも、1年に数回、注意喚起すべき事例を部署内通知することもあります。
瀧井氏 事務局としては、電子化して良かったと思えることは、まず報告前の一時保存の状態から情報がタイムリーに入ってくることです。また、過去データの蓄積・検索・統計ができますので、このデータ自体が病院の資産になっていくと感じています。
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河北総合病院医療安全管理室
感染管理認定看護師
浅野美奈子氏

セーフマスターの使用法・操作法に関して、新入職員への教育はどのようにされていますか。

瀧井氏 新入職員研修の際に、インシデントの報告義務の説明があり、そのツールとしてセーフマスターのことを説明し、ログイン方法について指導しています。
セーフマスターは画面の指示に従って入力していくことができますので、問い合わせなどはほとんどありません。
入力の仕方が間違っている場合は医療安全管理者や現場の各所属長などがそのつど指導しています。

セーフマスターはいろいろな原因分析法に対応しており、システム上で分析をして記録・保存ができるようになっていますが、どのようにご活用されていますか。
佐久間氏 現在は4M4E法を用いてインシデントの原因分析を行っています。今後は、事象によっては医療安全管理室が中心となってRCA法も展開したいと考えていますので、セーフマスターの分析機能を活用する予定です。
藤井氏 まだまだ分析機能は活用しきれていない状況ですが、セーフマスターはシステムの中で分析から改善・評価まで完結できるように設計されていますので、今後はもっと活用し、システムの中で分析レポートを作成していこうと考えています。

各部門からの報告や電話での問い合わせが絶えず気が抜けない

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その他、システムをお使いいただいているうえでご意見等ありますでしょうか。

藤井氏 医療安全に関しては、たぶんどの病院も同じことで悩んでいたり、問題点を抱えていたりすると思います。
個人情報の問題があり、どの病院もインシデント等の情報は外に出さないことが原則だと思いますが、病院の垣根をこえて出せるデータを出し合い、たとえば「転倒転落を防止するのにはこの方法がいい」というようなことを複数の病院間で話し合えるようになることが大切だと思います。
セーフマスターでは年に1,2回ほどユーザー懇話会を開催してもらっていますので、そのような機会を利用し、様々なコミュニケーションができるソーシャルネットワークのような場を準備していただけるとありがたいと思います。個人的な意見ですが(笑)。

セーフマスターより

当社では年に1,2回、地域ごとにセーフマスターのユーザー懇話会を開催しております。
今後はさらに、各病院間のコミュニケーションの充実を図れるよう、また、病院間でどのような情報共有が可能かを各病院様にご相談させていただき、懇話会を中心に活発にディスカッションができる場を提供していきたいと考えています。
どうもありがとうございました。

社会医療法人 河北医療財団

09河北総合病院を中心に、河北サテライトクリニック、河北リハビリテーション病院、河北総合病院分院、介護老人保健施設シーダ・ウォーク、透析センター、健診センターなどをネットワーク化し、東京都杉並区周辺地域住民の健康を推進している。
1980年代に旧厚生省の研究事業としてSuginami Regional Healthcare Systemの立ち上げの中心として活動し、その後全国的に広がる地域病診連携のさきがけとなった。
現在はKawakita Healthcare Collaborations(KHC)システムにより連携医療機関との電子カルテ相互閲覧など一歩進んだ連携ネットワークを構築している。

各種指定等(河北総合病院):
臨床研修病院(1988年4月1日厚生省指定)
地域医療支援病院(2006年5月9日 東京都)
日本医療機能評価機構認定(一般病院Ver.4.0)更新
 (1998年12月21日初回認定)
 (2003年12月21日更新認定)
 (2009年2月16日更新認定)
DPC対象病院
特定集中治療室(14床)
一般病棟入院基本料(7:1)