※以下の情報は取材時点のものとなります

左より
看護部長 |
:三橋 明美 氏 |
認知症看護認定看護師 |
:佐々木 恵 氏 |
認知症看護認定看護師 |
:齊藤 智子 氏 |
医療情報課 |
:砂崎 陽亮 氏 |
(以下、敬称略)
認知症ケアシステムの導入事例インタビューにご協力いただき、導入の背景や活用状況、導入後の効果などを伺いました。
(佐々木) |
システム導入前は、認知症高齢者自立度Ⅲ以上の患者様や、Ⅲ未満でもスタッフが対応に困った場合に介入依頼のメールがくる運用でしたが、メールの確認が遅れてタイムリーな介入ができないという課題がありました。 |
(齊藤) |
認知症高齢者自立度Ⅲ以上の患者様は日々20人前後になります。認知症高齢者自立度をⅡで判定したが、実はⅢだったという患者様もいて、見える化ができず、抜け漏れがわからないという課題がありました。 |
(SM) |
導入前は、電子カルテで自立度Ⅲ以上の患者様のスクリーニングをしていたのでしょうか |
(齊藤) |
電子カルテのテンプレートで入力し、対象患者の一覧は医療情報課に依頼していました。 |
(佐々木) |
身体拘束率の集計を現場がExcelで手入力しており、大変苦労していたので、システム導入で自動化したいと思っていました。 |
(佐々木) |
身体拘束について、観察項目、カンファレンス、一時解除など電子カルテテンプレートの 記録で行っていたことの一部をSafeMaster に移行したのですが、スタッフの業務の流れが変わるので抜け漏れがでないように慎重に検討しました。まず、何を移行して何を移行しないか、セーフマスターからの情報をもとに医療情報課で3案作っていただき、病棟スタッフにアンケートを実施し意見をもらいました。 |
(SM)
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最終決定はスムーズにいきましたでしょうか |
(佐々木) |
今までの業務の流れの中でやれたほうが良いものと、Safe Masterに移行したほうが良いものについて、さらに師長会などで何度か意見交換をしました。 現場の意見を尊重しながら、電子カルテでやれるところは残して、移行したほうが良いものは移してと、工夫しながら考えましたね。 |
(佐々木) |
実際のスタッフの動きをみてもらったり、電子カルテの情報などをみてもらったりして、お話できたことがよかったです。現場を知っていただいたことが一番大きかったと思います。
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(SM) |
現場を見る前は言葉だけで判断してしまっていましたが、実際みてみると「こういう活動をしているのだな」ということがわかり、 解像度が上がった気がします。初めての導入事例ということもあり、大変勉強になりました。 |
(佐々木) |
認知症高齢者自立度Ⅲ以上の患者様のピックアップはとてもスムーズになりました。毎日、活動する前にシステムの一覧で確認しています。介入している/していないが把握できるので、認知症高齢者自立度Ⅲ以上で介入していない患者様や、介入依頼中の患者様を優先的に見にいくことができます。また、介入依頼も浸透してきていて、病棟からの介入依頼も増えてきました。 |
(SM) |
電子カルテから認知症ケアシステムへスクリーニングが変更になり、現場は抵抗なくできた のでしょうか |
(佐々木) |
スクリーニングは入院時にやってくれているので、ほぼ抜け漏れがありません。状態が 変化したときに再スクリーニングの抜けがまだあるので周知が必要と認識しています。 |
(齊藤) |
システムの一覧で、せん妄スクリーニングを実施していない人が見える化できる点はよかっ たですね。今まではカルテのテンプレートで入力していましたが、抜け漏れの管理が難しかったです。 |
(齊藤) |
その他、医事課では、以前は加算対象患者をExcelで入力していたようですが、毎日データを出す必要があるとのことで、システムで出力できるようになってよかったと聞いています。 |
(佐々木) |
身体拘束の登録や終了をSafe Masterに移行したので、身体拘束率については慎重に確認しており、9月に移行が完了する予定です。 今まで現場が手入力で集計して苦労していましたので、 完全に移行できれば成果としてありがたいと思っています。また、毎月2回実施している身体拘束最小化チームのラウンドでは、その日の朝に、身体拘束の数を師長会で報告するのですが、身体拘束の検索機能を活用しています。 |
※身体拘束率の運用変化
◇移行前(Excel手集計) |
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◇移行後(システムで自動算出)
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(佐々木) |
認知症ケアラウンド、身体拘束最小化チームのラウンドを現在、Wordで管理しているのですが、こちらもSafe Masterに組み込んでいきたいと思っています。そうすれば検索をしたときに情報も出力できるので便利になります。また、身体拘束カンファレンスについても、抜け漏れを少なくしていかなくてはいけないと思っています。 |
(SM) |
医療情報課のお立場でコメントいただけますでしょうか |
(砂崎) |
Safe Masterの良いところは、それぞれの部門ごとに特化しているシステムである点が大きいと思っています。たとえば医療情報課では、各認定看護師からの依頼を受けて、電子カルテから各種データを抽出・加工して統計資料を作成してきました。しかし、電子カルテの構造上、専門的な指標や診療報酬に紐づくような細かい集計までは対応が難しいことも多く、限界を感じていました Safe Masterでは、そうした現場で求められる統計データを、ユーザー自身がリアルタイムに抽出できる機能が備わっており、これは非常に大きな利点です。 特に、診療報酬改定のたびに定義や対象項目が変わるようなケースでも、当課が毎回介入しなくても済むようになった点は、業務の効率化という意味でも助かっています。このように、電子カルテでは網羅しきれなかった専門性の高い領域にも柔軟に対応できる点が、Safe Masterの大きな魅力だと感じています。 |
(三橋) |
日本は超高齢化社会を迎え、認知症患者やせん妄患者の増加が顕著となっています。こうした状況において、認知症およびせん妄患者への対応は、看護師にとって非常に重要なケア領域です。これらのケアをより質の高いものにするためには、患者情報の収集・整理・分析を通じて、ケアの内容や効果を「見える化」し、有効活用していくことが求められます。ICTやシステムの導入により、データに基づいた個別性の高いケアが可能となるため、今後の発展が期待される分野です。現場と連携しながら、実践的な仕組みの構築を進めていく必要があります。 また、認知症に関する施策は、 国の方針や診療報酬制度にも反映されており、医療機関としてその責任を果たすことが求められています。一方で、認知症患者のケアにおいては、従来重視されていた医療安全の観点(転倒・転落防止や自己抜去の予防)に加えて、患者の尊厳を守る「倫理的視点」も重要です。身体的拘束に頼らない非拘束ケアの実践は、今後さらに重要性を増していくと考えられます。したがって、これからの認知症ケアには、医療安全と倫理の両面を統合した、多面的かつ柔軟な看護実践が求められます。医療機関、看護師、そしてシステム開発者が連携しながら、持続可能なケアの在り方を構築していくことが不可欠です。 |
(SM) |
私たちも集まったデータの活用が重要と考えていますが、その方法について知見がありませんので、今後も色々とご教示いただければと思っています。 本日は、大変貴重なお時間をいただきありがとうございました! |